近年、サイバー攻撃の脅威は大企業だけでなく、中小企業にも急速に拡大しています。2024年に入ってからも、その傾向は一層強まっており、特にランサムウェア攻撃が急増しています。
中小企業はサイバー攻撃の新たな標的となっており、その背景にはさまざまな要因が隠れています。
この記事では、なぜ中小企業がサイバー攻撃のターゲットとなっているのか、その現状と原因、そして具体的な対策について詳しく解説します。
サイバー攻撃の増加:2024年の現状
まず、2024年上半期に報告されたサイバー攻撃の被害者数は2,568件に達し、そのうち61%が従業員200名以下の小規模な企業であることがわかっています。
この数字は、中小企業がサイバー攻撃の主要なターゲットになりつつあることを示しています。なぜ中小企業が狙われやすいのでしょうか?
セキュリティ対策が不十分な中小企業
多くの中小企業は、限られた「リソース」(予算、人員、技術知識など)を抱えており、十分なセキュリティ対策を取れていないのが現状です。ここで言うリソースとは、サイバーセキュリティに費やす予算や時間、そして社内にセキュリティの専門知識を持つ人材が不足している状況を指します。たとえば、IT担当者が兼務であったり、セキュリティ対策を外部に依頼する余裕がなかったりといった現状が、攻撃者にとって格好のターゲットとなっています。
日本損害保険協会の調査によると、中小企業の経営者の約24%がサイバー攻撃に対する対策を行っていないと回答しており、サイバーリスクへの意識が依然として低いことが浮き彫りになっています。
サプライチェーン攻撃の増加
次に注目すべきは、サプライチェーン攻撃の増加です。ここで「サプライチェーン攻撃」について説明します。
サプライチェーンとは、製品やサービスが消費者に届くまでの一連のプロセスや、関係者(原材料供給者、製造業者、流通業者など)を指します。サプライチェーン攻撃とは、このプロセスの中で特にセキュリティがぜい弱な部分を狙って攻撃し、全体のシステムに影響を与える手法です。
中小企業は、多くの場合、大企業の下請けとして仕事をしており、2次請けや3次請けとして位置づけられる企業が多いです。攻撃者は、大企業に直接攻撃を仕掛けるのではなく、セキュリティがぜい弱であるこれらの下請け企業を狙い、そこから大企業のシステムに侵入しようとします。
具体例としては、大阪急性期・総合医療センターが2022年10月に受けたランサムウェア攻撃があります。医療センターに給食を提供していた委託先の中小企業のぜい弱性を突かれ、数億円の被害が発生し、診療が中断される事態となりました。
この事例からも、サプライチェーンの中にあるぜい弱な企業が攻撃の入り口となるリスクが浮き彫りになっています。
サイバー攻撃の手法が多様化
サイバー攻撃は手法の多様化が進んでおり、中小企業もその標的となっています。フィッシング、マルウェア、そしてランサムウェアなど、さまざまな手段が攻撃者により活用されています。
特にランサムウェアは、多くの中小企業にとって大きな脅威です。ランサムウェアは、企業のデータを暗号化し、解読のために身代金を要求する手法です。中小企業は、攻撃を受けた際にデータ復旧に多額のコストがかかり、場合によっては業務停止に追い込まれることがあります。2024年に入ってからのランサムウェア攻撃の被害額は、数千万円に上るケースも少なくありません。
デジタル化の急速な進展とセキュリティの遅れ
さらに、コロナ禍以降、リモートワークやオンラインサービスの普及が急速に進んでいます。多くの企業はビジネスをデジタル化することで新しいビジネスチャンスを得る一方で、セキュリティ対策が追いつかないという問題も生じています。
中小企業は、この急速な変化に対応するためにリソースを投じてきた結果、セキュリティ対策が後回しになってしまうケースが増えています。
リモートワークでは、従業員が自宅から企業のシステムにアクセスしますが、社内ネットワーク外での作業が増えることで、セキュリティリスクも高まります。VPN(仮想プライベートネットワーク)の設定が不十分であったり、従業員が個人端末で業務を行っている場合、そのセキュリティ管理が甘くなることで、サイバー攻撃の成功率が上がってしまいます。
中小企業が取るべき対策
では、中小企業がサイバー攻撃に対してどのように対策を取ればよいのでしょうか?セキュリティの専門知識がない経営者や従業員でも取り組みやすい具体的な対策をいくつかご紹介します。
1. セキュリティ意識の向上と従業員教育
まずは、サイバー攻撃のリスクに対する認識を持つことが重要です。フィッシングメールや怪しいリンクに対する警戒心を持つことから始めましょう。フィッシングとは、信頼できる機関を装ったメールやメッセージを通じて個人情報を盗み取ろうとする手法です。経営者だけでなく、全ての従業員に対してこうした攻撃手法に注意を払うよう教育を行うことが大切です。定期的なセミナーや研修を行うことも効果的です。
2. パスワード設定の強化
次に、パスワード設定の強化が重要です。多くの人が使っている「1234」や「password」などの単純で予測しやすいパスワードを避けることが基本です。代わりに、数字や大文字、小文字、記号を組み合わせた複雑なパスワードを設定することが推奨されます。
さらに、可能であれば二要素認証(2FA)を設定しましょう。二要素認証は、パスワードに加えて、スマートフォンに送信される確認コードを入力することで、セキュリティを強化する仕組みです。これにより、不正アクセスのリスクを大幅に減少させることができます。
3. ソフトウェアの定期的なアップデート
使用しているWindowsやMacOSのアップデート(例:Windows Update)を定期的に行うことは、非常に重要なセキュリティ対策です。これらのアップデートには、最新のセキュリティ修正が含まれており、攻撃者が利用するぜい弱性を防ぐことができます。
また、利用しているソフトウェアやアプリケーション(例えば、Microsoft OfficeやAdobe製品など)も定期的にアップデートを行い、常に最新バージョンを保つことで、システムのぜい弱性を最小限に抑えることができます。
4. ウイルス対策ソフトおよび高度なマルウェア対策
ウイルス対策ソフトを導入することは、最低限のセキュリティ対策として必須です。これにより、マルウェアやウイルスの侵入を防ぎ、企業のシステムが感染するリスクを大幅に軽減できます。
さらに、重要な情報を扱うPCやサーバーには、EDR(Endpoint Detection and Response)などの高度なマルウェア対策ソフトを導入することを強くお勧めします。EDRは、従来のウイルス対策ソフトと異なり、リアルタイムで異常な挙動を検出し、迅速に対策を講じることができるため、より高いセキュリティを提供します。
5. サプライチェーン全体のセキュリティチェック
中小企業が取引先として大企業と関わる場合、サプライチェーン全体のセキュリティチェックも必要です。自社だけでなく、取引先のセキュリティ状況についても確認し、適切な対策が取られているかをチェックすることが求められます。定期的にセキュリティ対策を見直し、改善していくことが重要です。
今後の展望と中小企業が持つべき覚悟
今後も、中小企業がサイバー攻撃のターゲットとなる傾向は続くと予測されます。特に、ランサムウェアやフィッシング攻撃はますます巧妙化し、攻撃者はより多くの中小企業を狙うでしょう。
そのため、経営者はセキュリティ対策を「後回し」にせず、企業の重要なリスク管理の一環として捉える必要があります。
中小企業がサイバー攻撃に備えるためには、日々の業務の中でセキュリティを意識し、適切な対策を取ることが不可欠です。将来的な成長のためにも、今すぐ行動を起こしましょう。
まとめ
中小企業がサイバー攻撃の新たな標的となっている現状は、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃の増加など、さまざまな要因が絡み合っています。特に、中小企業はセキュリティ対策がぜい弱であることが多く、攻撃者にとって格好のターゲットです。今後もこの傾向は続くと考えられ、適切なセキュリティ対策が求められます。
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